歴史、文化、風土
【Netflixでドキュメンタリー。なぜ覇権は長く続かないのか?】
先日ご紹介した(2021/08/30)
【食品産業に潜む腐敗@ドキュメンタリーNetflix】
https://sake.vietnhat.tv/e52888.html
◆パンデミック -知られざるインフルエンザの脅威-
◆新型コロナウイルスをダイジェスト
◆ヒューマンボディ: 内側からわかる身体の仕組み
そして世界の歴史を、美化された感動「ドラマ」ではなく、ドキュメンタリーで観たいな思いました。
◆ローマ帝国
◆マルコ・ポーロ
◆オスマン帝国:皇帝たちの夜明け
◆ナイトフォール─悲運の騎士団─(ドラマ)
◆エイジ・オブ・サムライ: 天下統一への戦い
◆ラスト・ツァーリ ロマノフ家の終焉
◆失われた海賊王国
興味深いのは、ドラマ仕立てのエピソードの間に、
さまざまな立ち場の歴史研究家たちが、自身が収集した史実、資料から、見解を述べている点です。
歴史家たち自らが脚本を手掛けているドキュメンタリーもあります。
ドラマ自体はNHKの大河ドラマ、あるいはそれ以上のクォリティーではあるのですが、
歴史家たちの説明を補足するために、同じシーンが繰り返し使われていて、
どちらかと言うと、どう歴史を紐解くかということにスポットが当てられています。
私が興味を持ったのは、「なぜ、覇権は長く続かないのか」ということについてでした。
ローマ帝国、オスマントルコ、モンゴル帝国、スペイン、大英帝国、
どの国も一度は覇権を握ったものの、その後、衰退していきます。
【オスマン帝国:皇帝たちの夜明け】

ヨーロッパの(キリスト教圏の)映画では、オスマントルコはつねに「敵方」として扱われています。
イスラム教、ラクダで砂漠を駆け巡り、海の向こうから攻めてくる、不可解な民族…。
そんなイメージが付きまといます。
このドキュメンタリーでは、
西暦1453年のオスマン帝国の皇帝メフメト2世による、
東ローマ帝国(ビザンツ帝国)の首都コンスタンティノープルの、
征服に焦点を当てて描かれ、解説されています。
とここまでは、世界史の時間に習った記憶がありますが、
オスマントルコの若き皇帝メフメト2世の素顔については初めて知りました。
古い慣習や考え方にとらわれない柔軟な考え方、実行力、
帝王学を叩き込む重臣との確執、孤高の者だけが抱く孤独、
疑心暗鬼、裏切り…これらを乗り越えて、
戦略に長けて統率力に優れた、軸のブレない皇帝へと成長してゆきます。
しかし長らく君臨してきた東ローマ帝国はなかなか落とせません。
ここで負ければすべての兵を失い、領土に攻め込まれ蹂躙される…つまり国民が奴隷になる、
メフメト2世はついに瀬戸際に追い込まれます。
ここでたいへん興味深いのは、
最後の決戦前夜、空に血のような赤い満月が昇ったことに対する、
オスマントルコ軍と東ローマの街の人々の捉え方が、勝敗を分けてゆくエピソードです。
現代人なら「月蝕」はどうということもありませんが、
当時の人にとっては、吉兆、あるいは不吉とされていました。
「赤い月」が、願いが叶う兆しとするオスマントルコ軍と
「悪魔の仕業、不吉の前兆」とするローマ人とでは、士気に大きな差が開いてしまいました。
こうして皇帝コンスタンティノス11世パレオロゴス(劇中では13世となっていた)は、
最後の皇帝となります。
「なぜ、覇権は長くは続かないのか?」
どの国も、覇権を握るまでは破竹の勢いですが、
覇権を握ってからは300年・・・あるいは数百年と短く、何千年とは続きません。
上のドキュメンタリーがすべてを物語っているとは言いませんが、こうして並べてみると、
「覇権」というものは変化する生き物であり、「寿命」があるのではないかと思ったのです。
時代、科学・経済の発展によってその長さはまちまちですが。
滅びる時は外部から侵攻され、攻め落とされるというより、
内部分裂を繰り返し、衰え、老朽化し、内部から崩壊し、やがては新しい勢いのある時代の波に呑みこまれる。
表舞台に出て来る「覇権」の正体とは、このようなものではないかと思うのです。