【映画「インドシナ」に見るベトナム】
映画【インドシナ】
(1992年、フランス製作。レジス・ヴァルニエ監督)
を鑑賞しました。
この映画が封切られた時に、私は
「インドシナ」を「インドネシア」と思い違いしていて、
…その間違いに気づいたのは、ベトナムに来てからでした…。
「インドシナ」
現在のベトナム・ラオス・カンボジアを合わせた、
中国に接した南側の半島のことです。
仏印(ふついん)とも言います。
映画は、カトリーヌ・ドヌーヴ主演で、
1930年代のフランス領インドシナを舞台とした作品です。
当時、フランスの植民地だったインドシナでは、
現地の貧しい人々は奴隷として働かされており、
フランス人はじめ、富裕層や特権階級が、
搾取していた時代でした。
縁あって、インドシナでゴム園を経営する独身のフランス人女性エリアーヌと、
友人の遺児で、エリアーヌの養女となり、
その後「ベトナムのジャンヌ・ダルク」と呼ばれ、
独立運動に身を投じてゆくベトナム人女性、カミーユ。
時代に翻弄される二人の女性の生き様を縦糸に、
フランス人とベトナム人の生活観、経済観、結婚観の違い、
女として、母としての想い、愛国心を横糸に絡ませながら、
一大叙事詩を織りなしてゆく、
アカデミー外国語映画賞、ゴールデングローブ賞 外国語映画賞、
セザール賞を受賞した名作です。
監督や制作陣はフランス人ですから、ベトナムの捉え方に、
どこか日本を舞台にした映画「シルク」や「ラスト・サムライ」に通ずるような、
微妙な違和感があるのですが、
それはそれで、欧米人の捉え方や感覚が伝わって、面白い。
おそらく、封切られた当時では、
あまり良く分からなかったであろうドラマも、
「ハイフォン」、「フエ」、「ハロン湾」といった地名が分かり、
フランス人が使うベトナム語が、
たとえ数語分かるだけでも臨場感が増して、
ベトナムにいる今だからこそ、観て良かったなと思うのです。
また、今では観光船が行き来する観光スポット「ハロン湾」が、
「ここに足を踏み入れたものは、二度と下界に戻れない」と言われた、
「のろいの島々」として、
この世の物とは思えぬ、たいへん神秘的な美しさで描かれていることも興味深い。
カミーユ演じる、ベトナム系フランス人、「リン・ダン・ファン」が、
忽那汐里似の、清楚ながらも芯の強い女性を熱演しているのも、
見どころです。
また、カトリーヌ・ドヌーヴが着用する、
東西の文化が融合したエキゾチックな色・柄・デザインの、
アール・デコ調のファッションの数々も、ステキです。
